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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

量子力学

光学定理(複素ポテンシャル):複素波数

前回、波数が実数のときの光学定理についてまとめた。 koideforest.hatenadiary.com今回は、より一般的な、波数が複素数のときの光学定理を考察する。波数ベクトルを次のように定義する。 方向ベクトルまで複素数にすると訳が分からなくなる。これより、確率…

光学定理(複素ポテンシャル):実波数

前回、実ポテンシャルに対する光学定理を導いた。 koideforest.hatenadiary.com今回は、複素ポテンシャルだが、波数は実数である時の光学定理を考える。 これは、無限遠方ではポテンシャルの虚部が完全に無くなっている場合に対応する。導出は前回とほぼほぼ…

光学定理(実ポテンシャル):外向波と内向波

実ポテンシャル、つまり非弾性散乱が無い時の光学定理を導く。散乱波を次のように定義する。 はそれぞれ外向波、内向波を表す。球座標に対するは 入射波に対する勾配は、 散乱波に対する勾配は、においてだけ残すと、 したがって、確率流密度は 干渉項を計算…

平面波の球面波展開における漸近形

平面波の角運動量展開(球面波展開) 球Bessel関数よりも球Hankel関数の方が、漸近形を覚え易い。 これらを使うと、 例えば、仮に平面波の複素共役を取った場合、

連続の式

連続の式を導出する。発想として、密度の時間依存性と時間依存のシュレーディンガーを方程式を結び付けることを考える。 ここで、ベクトル解析の関係式から、 したがって、 よって、連続の式は、 ポテンシャルが虚部を含む時()、確率が保存しないことがわ…

水素分子イオンの固有値方程式を行列代数で解くことについて(重なり有り)

前回、重なり積分がゼロの時について考察した。 koideforest.hatenadiary.com今回は、より一般的なの場合について、複数の解法を考える。解きたい行列方程式は、 の固有値方程式を一般化固有値方程式と呼び、の場合を標準固有値方程式と呼ぶ。 つまり、の時…

水素分子イオンの固有値方程式を行列代数で解くことについて(重なり無し)

行列代数を用いて固有値方程式を解くことを、具体的に考えてみる。簡単のため、重なり積分をとして考える。 ハミルトニアン行列はエルミート行列なので、ユニタリー行列を用いて、対角行列に変換することが出来る。 は単位行列である。したがって、 式で単に…

調和振動子のハミルトニアンを生成消滅演算子で表す。

生成消滅演算子の係数がいつも天下りだったので、自分で求めてみることにした。調和振動子のハミルトニアン ちなみに、古典軌道の調和振動子について復習しておくと、 復習終了。ハミルトニアンを平方完成するような演算子を作りたい。 見たところ、 とおい…

水素分子イオンの各種一電子積分(プロット)

前回までに、水素分子イオンの結合・反結合軌道についてまとめた。 koideforest.hatenadiary.com koideforest.hatenadiary.com今回は、各値をプロットしてその挙動を確かめる。 各種積分値 の方がに対する減衰が速いため、より近距離で働くことが分かる。 ハ…

水素分子イオンの各種一電子積分

水素分子イオンの重なり積分、クーロン積分、交換積分を求める。参考にしたPDF https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=7&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwilj8WMrbvgAhVPBGMBHYacDWMQFjAGegQIAxAC&url=http%3A%2F%2Fwww.geocities.jp%…

Crude adiabatic (Crude-Born-Oppenheimer) 近似

以前にBorn-Oppenheimer近似(BO近似)及び断熱(adiabatic)近似について言及した。 koideforest.hatenadiary.comここでは、またちょっと微妙に違うCrude-BO近似やCrude adiabatic近似を紹介する。前回で肝となっていたのは、パラメータに依存した演算子を定…

透熱的電子基底とBorn-Oppenheimer近似

前回は、断熱的電子基底(電子ハミルトニアンに対して対角)を用いたBorn-Oppenpheimer近似(BO近似)について解説した。 koideforest.hatenadiary.com 今回は、もう少し一般化した透熱的な場合を紹介する。前回、ハミルトニアンを と定義した。ここで、の中…

ポテンシャルのルジャンドル関数展開

「ポテンシャルの角運動量展開」の二次元版だと思って頂いて差し支えない。係数 はルジャンドル関数の直交関係から出て来る。 koideforest.hatenadiary.com上記の式を用いて、まで展開してみる。 import numpy as np from math import radians from scipy.sp…

ボルン・オッペンハイマー近似

Born-Oppenheimer近似の説明で、電子波動関数が原子核の位置に依存する部分の導入に違和感を感じていたので、自分なりにまとめる。ハットは演算子が残っていることを表す。 例えば、電子の添え字をとし、電子の位置をとすると、 のように、位置表示(位置を…

ポテンシャルの角運動量展開

非球対称ポテンシャルでは、波動関数を球面調和函数で展開すると角運動量を添字とする行列になることを示した。 koideforest.hatenadiary.com 角度積分するのに掛かる時間を、必要な最大の軌道角運動量と動径メッシュの数をそれぞれ、とすると、全ての行列要…

非球対称ポテンシャルにおけるT行列

前回、非球対称ポテンシャルの時には、位相シフトがT行列を表すのにあまり役に立たないことを示した。 koideforest.hatenadiary.com今回は、どうやってT行列(の行列成分)を求めるかを考える。 波動関数はT行列を使って次のように書けることを前回示した。 …

散乱理論:位相シフトとT行列:非球対称ポテンシャル

以前、球対称ポテンシャルの時の位相シフトとT行列についてまとめた。 koideforest.hatenadiary.com今回は、非球対称の時に両者がどのように結ばれるかを調べる。前回と同様、外側で値を持たないポテンシャルに対する外側の波動関数は、一般に次のように書け…

永年方程式は無限空間には使えない。

第一原理計算でよくある平面波展開は、よく考えると無限空間には使えない。 というのも、平面波の規格化が箱の規格化ではなく、デルタ関数規格化だからである。を無限空間の平面波で展開すると、 これの左から任意の平面波をかけて、位置で積分することで直…

Muffin-tin近似と厳密なポテンシャルとの差について

簡単のため、二個の離れた原子核からのクーロンポテンシャルのみを扱うとする。 この時の、厳密なポテンシャルとMuffin-tin近似との差を見る。Muffin-tin近似をする際、隣のサイトのポテンシャルの球平均は、以前にまとめた方法を使った。 koideforest.haten…

Juliaで一次元井戸型ポテンシャル

以下のサイトの下の方に、Juliaで一次元のシュレーディンガー方程式を解くPDFが紹介されている。 物理ノートby永井Juliaの練習としてやってみた。 PDF内では、無限の井戸の中に斥力ポテンシャルを入れた場合をやっているが、ここでは引力ポテンシャルに対し…

量子力学でのガリレイ変換

特殊相対論(古典力学)の導入でガリレイ変換とローレンツ変換(ローレンツブースト)を比較することが多いが、そもそも量子力学でのガリレイ変換ってなんだ?と思い、簡単に考察。 以下のpdfを参考にした。 http://cat.phys.s.u-tokyo.ac.jp/lecture/QM_1_1…

多重項を数える(2)

以前に、軌道内の多重項を求めるスクリプトを書いた。 koideforest.hatenadiary.comここではそれらを用いた上で、さらに軌道間で多重項を合成する。 軌道の記号と値を行き来する関数 def spec2l( spec ): if spec in { "s", "S" }: l = 0 elif spec in { "p"…

量子揺らぎと不確定性原理

量子揺らぎと不確定性原理について言及してある記事を下記サイトで見つけた。 第一原理計算入門 密度汎関数法 理解への道「量子揺らぎ」と聞くと、何だかよくわからないが、要は「状態が混ざる」ということである。古典的な意味の平均(期待値)および分散は…

密度汎関数理論( DFT)では強配位子場しか計算出来ない?

学生の時に教授から言われた「DFTでは強配位子場しか計算出来ない」というフレーズをふと思い出した。 その時は何を言われているのかよくわからなかったが、今は「何も工夫しなければまぁそうだろう」と思う。いくつか鍵となる概念がある。 DFTは、Kohn-Sham…

三つの散乱波動関数

前回、位相シフトと行列の関係についてまとめた。 koideforest.hatenadiary.com散乱波動関数は、ざっくり3つに分けられると思うので、それぞれまとめてみた。 結局は、位相シフトで全部繋がる。 散乱振幅 位相シフト Green関数(Lippman-Scwinger方程式解)

散乱理論:位相シフトとT行列

外側で値を持たないポテンシャルに対する外側の波動関数は、一般に次のように書ける。 平面波の球面波展開と比較すれば、動径S-eq.の非正則解の線形結合になっていて、一般解の形になっているのがわかると思う。 であるため、この変換は厳密である。 (わざ…

多重項を数える(1)

前回、binary表現を使って、電子配置を作ることを試みた。 koideforest.hatenadiary.com次のステップとして多重項を数え上げるため、電子配置を作るのと同時に角運動量とスピンも一緒にリストで保存するように改良した。 def add_electron( configurations0,…

バイナリーと量子力学

例えば2p軌道とかのp軌道の場合、一電子状態は以下のどれかに対応する。(1,u), (1, d), (0, u), (0, d), ( -1, u), ( -1, d)これを、binary形式、「電子がいる軌道=1」、「電子がいない軌道=0」とすれば、例えば、(1,u)と(1, d)が占有されているとき、110000…

3価のTiイオンのLII, LIII端における原子多重項遷移

Tiの自由イオン状態のedgeは三本のピークが立つ。Tiは基底状態で3dが空っぽなので、基底状態の多重項はとなる。 (多重項はで表される。ただし、をで表す。)edgeでは、2pにホールが開いて、3dに電子が一個足されるので、 電子配置:2p3d 出現する多重項は、…

Green関数の固有関数展開

前回、フーリエ変換の視点で自由Green関数を弄った。 koideforest.hatenadiary.com今回は、もっと一般的(?)にハミルトニアンの固有関数で展開することを考える。 したがって、Green関数の位置表示は、 自由電子の時には、運動エネルギーの固有状態表示で…