行列代数を用いて固有値方程式を解くことを、具体的に考えてみる。
簡単のため、重なり積分をとして考える。
ハミルトニアン行列はエルミート行列なので、ユニタリー行列を用いて、対角行列に変換することが出来る。
は単位行列である。
したがって、
式で単に追っていくと、「ふーん」という感じなのだが、よく見てみると、
となり、「?」というよくわからん状態になっている。
この辺り、何が起こっているのかを考えることにする。
固有値については、以前に求めた。
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今回は、として考えているから、
これに対して、「オリジナル」の固有値方程式を満たす固有ベクトルは、
は規格化因子である。
固有ベクトルが直交規格化されていることから、を対角化するユニタリー行列を以下のように作れる。
したがって、
この式が成り立つためには、の成分のうち唯一つが残って他はゼロになれば良い。
そして、その条件こそがであり、これは固有ベクトルが満たす条件と等しい。
この事実は、以下のようにの作り方から明らかなのだが、普段の問題を解く手続きとしては、固有値と固有ベクトルを求めて終わってしまう(を作るところは飛ばしてしまう)ので、目にする機会は少ない気がする。
また、このことからも明らかなように、固有値方程式を解いて得られる固有ベクトルはのことであり、ではない。
変換が多いと、どの表示の時の値を求めているのか、よくわからなくなるので、注意が必要に思う。