前回は、断熱的電子基底(電子ハミルトニアンに対して対角)を用いたBorn-Oppenpheimer近似(BO近似)について解説した。
koideforest.hatenadiary.com
今回は、もう少し一般化した透熱的な場合を紹介する。
前回、ハミルトニアンを
と定義した。
ここで、の中のポテンシャル項を都合の良いように分ける(or ポテンシャルを付け足す)。
、とし、を原子核の位置をパラメータ化したものとすると、
と定義する。
前回の断熱的な場合(adiabatic)では、の固有状態で展開したが、透熱的な場合(diabatic)ではより恣意的なの基底で展開する。
よって、任意の状態は次のように展開出来る。
一見、ただとが入れ替わっただけに見えるが、違いを強調しておくと、
となり、透熱的な場合にはポテンシャルの非対角項が残る。
透熱的電子基底を用いた展開を、全ハミルトニアンのシュレディンガー方程式に適用すると、
が前回には無かった項である。
新しい項が加わって、問題が複雑になっただけのように感じられるが、やも基底の影響を受けている。
そのため、が導入される代わりに、と出来るような基底を見つければ、BO近似( )の影響を小さくする(精度を高める)ことが出来る。
どんな基底(もしくはポテンシャルの分け方)を選択すれば良いかは問題に依存するであろうが、基底を弄って近似を調節出来るのは面白いと思う。