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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

周期結晶におけるフーリエ変換(フーリエ級数展開)。

そもそもの「フーリエ変換」と「フーリエ級数」の違いについては以下のサイトが詳しい。
フーリエ変換とDFTの関係
離散化と周期化

ざっとまとめると、
フーリエ変換:x(連続、非周期)→ k(連続、非周期)
フーリエ級数:x(連続、周期)→ k(離散、非周期)
z変換:x(離散、非周期)→ k(連続、周期)
離散フーリエ変換:(離散、非周期)→ k(離散、非周期)

したがって、周期結晶では周期性があるので、フーリエ級数に対応する。
しかし、固体物理で言う周期性には二段階あるため、注意が必要である。簡単のため一次元を考えると、

  1. 周期 a: unit cellの周期性
  2. 周期 L:  N個のunit cellの周期性

 Nというのは、フーリエ級数展開するのときのパラメータの様なものだと考えるのが簡単である。
もう少し説明すると、「 aがunit cellの周期」であることを一旦忘れて、「 aが領域 Lのデータ点の間隔」と思えば、 L N)が大きければ大きいほど波数の間隔は細かくなり、長波長の波を表現することができる。
 N \rightarrow \inftyとすると、「フーリエ変換」に戻り、周期性の恩恵は得られない。

わざわざ二段階にする必要は無いように感じられるかもしれない。しかし、周期 aだけを採用すると、周期 aで繰り返している現象しか記述できない。例えば、波動関数がunit cellをまたがって位相情報を共有している場合、明らかに波動関数の周期は aではない。その周期が収まる「入れ物」が必要であり、収まるように拡大した周期が Lなのである。

この条件において、フーリエ級数展開を考える。
そのために、ややこしいが、「周期 Lの周期性が有限回( 2M+1回)」であるとし、後で M\rightarrow \inftyの極限を取る方法を採用する。

任意の周期関数 fは次のように書ける。

\displaystyle
f( r ) = \sum_{m=-M}^M f_L( r - m L )
ただし、 f_L( r )  0 \le r < L の範囲で値を持つとする。

これを「フーリエ変換」する。
係数の付け方は以前の内容を踏襲。
koideforest.hatenadiary.com

\displaystyle
f( k ) = \int dr \, f( r ) e^{- i k r }
  = \sum_{m=-M}^M \int dr \, f_L( r - m L ) e^{- i k r }
\\
\displaystyle
\qquad
  = \sum_{m=-M}^M e^{- i k m L } \int^L_0 dr' \, f_L( r' ) e^{- i k r' }
  \equiv f_L( k ) \sum_{m=-M}^M e^{- i k m L }

 \sum_{m=-M}^M e^{- i k m L }はディリクレ核と呼ばれ、 M \rightarrow \inftyデルタ関数になる。
(参考:離散化と周期化
これがこの記事の肝である(肝の部分を引用で済ますのもどうかと思うが)。
記事によれば、

\displaystyle
\lim_{M\rightarrow \infty} \sum_{m=-M}^M e^{- i k m L }
  = \frac{2\pi}{L} \sum_{n=-\infty}^\infty \delta\left( k - \frac{2\pi}{L} n\right)
\\
\qquad
\displaystyle
  \equiv \frac{2\pi}{L} \sum_{n=-\infty}^\infty \delta\left( k - k_n \right)

したがって、

\displaystyle
f( r ) = \sum_{m=-\infty}^\infty f_L( r - m L )
\\
\displaystyle
f( k ) = \frac{2\pi}{L} \sum_{n=-\infty}^\infty  \delta\left( k - k_n \right)  \int^L_0 dr' \, f_L( r' ) e^{- i k r' }
  = \frac{2\pi}{L} \sum_{n=-\infty}^\infty  \delta\left( k - k_n \right)  f_L( k_n )

逆変換は

\displaystyle
f( r ) = \frac{1}{2\pi} \int dk \, f(k) e^{ikr}
  = \frac{1}{L} \sum_{n=-\infty}^{\infty} f_L(k_n) e^{i k_n r}
  = \frac{1}{L} \sum_{n=-\infty}^{\infty} f_L(k_n) e^{i k_n ( r - mL )}
\\
\displaystyle
\qquad
  = \frac{1}{L} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \int dr' \, f_L( r' ) e^{i k_n (r - mL - r')}
\\
\displaystyle
\qquad
  = \frac{1}{L} \frac{1}{\Delta k} \sum_{n=-\infty}^{\infty} \Delta k \, \int dr' \, f_L( r' ) e^{i k_n (r - mL - r')}
\\
\displaystyle
\qquad
  = \frac{1}{2\pi} \int dk\, dr' \, f_L( r' ) e^{i k (r - mL - r')}
\\
\displaystyle
\qquad
  = \int dr' \, f_L( r' ) \delta( r - mL - r' )
\\
\displaystyle
\qquad
  = f_L( r - mL )
 m f( r ) = f_L( r - mL )を満たす整数である。


ここまでは、ほぼ一般のフーリエ級数の話である。
ここから、二段階の周期性を入れた「周期結晶のフーリエ級数展開」の話になる。

もし、関数 g( r )が周期 aの周期性を持つ場合、周期 Lは周期 a N個含むから、

\displaystyle
g( r ) = \sum_{m = -\infty}^{\infty} g_L( r - m L )
\\
\displaystyle
g_L( r ) = \sum_{l = 0}^{N-1} g_a( r - l a )

これにより、フーリエ級数

\displaystyle
g_L( k_n ) =  \int^L_0 dr' \, g_L( r' ) e^{- i k_n r' }
  = \sum_{l = 0}^{N-1} \int^a_0 dr' \, g_a( r' - l a ) e^{- i k_n r' }
\\
\displaystyle
\qquad
  = \sum_{l = 0}^{N-1} e^{-i ( k_n a ) l} \int^a_0 dr'' \, g_a( r'' ) e^{- i k_n r'' }
  \equiv \sum_{l = 0}^{N-1} e^{-i ( k_n a ) l} g_a( k_n )

 \sum_{l = 0}^{N-1} e^{-i ( k_n a ) l}は以前にまとめた内容が使えて、 n = n_K N  n_K:任意の整数)のみが許される。
koideforest.hatenadiary.com
注意として、以前の記事では 0 \le n \le N-1の範囲(後述)だったため k_n = 0しか許されないが、今の場合には無限なのでゼロ以外にも成分が残る。
したがって、

\displaystyle
\sum_{l = 0}^{N-1} e^{-i ( k_n a ) l} = N \delta_{k_n, K}
\\
\displaystyle
K \equiv \frac{ 2 \pi }{ L } n_k N = \frac{ 2 \pi }{ N a } n_k N = \frac{ 2 \pi }{ a } n_K 
\\
\displaystyle
g_L( k_n )   = N \delta_{k_n, K} g_a( K )
 Kは逆格子ベクトルと呼ばれ、周期 a格子定数)で決まる。
したがって、 k = \tilde k + Kとすれば、 \tilde k = k_i ( 0 \le i \le N-1 ) K_j = k_{jN}の二つのラベルで関数を表すことができる。
これが、以前に 0 \le n \le N-1の範囲しか考えなかった理由である( \tilde k_i ( 0 \le i \le N-1 )のみを考えていたということ)。

これにより、周期 Lを持つ関数 f_Lは、

\displaystyle
f_L( k ) = f_L( \tilde k + K ) = f_{L, K}(\tilde k)
のように表すこともできる。

逆変換は、

\displaystyle
g( r )  = \frac{1}{L} \sum_{n=-\infty}^{\infty} g_L(k_n) e^{i k_n r}
  = \frac{1}{a} \sum_{j=-\infty}^{\infty} g_a(K_j) e^{i K_j ( r - j a )}
となる。