プリゴジンの『存在から発展へ』では、パイこね変換の回数を「時間」として見做し、パイこね変換を基にして時間演算子を定義した後にリウビリアンとの非可換性を論じている。
存在から発展へ【新装版】 | みすず書房
時間演算子については、様々な議論がなされている。
以下の文献では、ハミルトニアンと非可換な時間演算子について数学的に精密な調査をしている。
https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1266-4.pdf
ここでは、位置と運動量の非可換性のアナロジーから、リウビリアンから時間演算子を構築できないか妄想する。
- (空間)並進操作
位置演算子が先にあるとして、運動量演算子を定めていく過程をおさらいする。(参照:JJサクライ)
が空間並進操作の演算子として、以下の性質を満たすと「定義」する。
並進操作として、更に以下の性質を要請する。
- ユニタリー性(並進操作の前後でノルムが保存):
- 加法性:
- 恒等操作:
- 逆元:
2~4により、並進操作はアーベル群を為す。
これらを満たすの表現として、エルミート演算子
を用いて以下のように表せる。
を用いた表現と、元々の
の性質を比べると、
が微分演算を含むことがわかる。
の意味を考えるために、
の交換関係に着目すると、
正準交換関係に合わせるために、次元の調整でプランク定数(をで割ったディラック定数
)を用いることで、運動量演算子
が導入される。
また、無限小ではなく有限の並進操作では、
- リウビリアンからの時間演算子(妄想)
リウビリアンは密度行列
に対して、(量子)リウビル方程式を満たす。
時間演算子に満たして欲しい性質として、
との非可換性を課す。
なぜなら、位置と運動量の交換関係から非可換性には微分演算が重要であり、には既に(絶対時間・外部時間としての)時間微分の意味が含まれている。
そのため、(絶対時間・外部時間と対応するような内部時間を測る)は
と非可換であって欲しい。
また、非可換なが作れれば、
の減少関数を介してリアプーノフ関数が作れるらしい(by プリゴジン)。
の非可換性から話を進めるためには、
の固有値・固有状態があることが要請される。
を対角化する基底を選択した場合、逆に
となることが予想される。これは、運動量基底を選択した際に、位置演算子が運動量の微分演算になることに対応する。
が
の微分演算になるということは、
を並進移動させる操作の母関数になるということである。
そのため、を並進移動させる意味がわかれば、一般的な物理系に対して
を構築できる可能性があるように思える。
、、、というのが妄想話である。
そもそも、の固有値・固有状態がよくわからない。
開放系量子系において、の固有状態は共鳴・反共鳴状態に対応するらしいが、詳しくは存じ上げない。
https://yamadazaidan.jp/wordpress/wp-content/uploads/2021/09/2012s_Hatano.pdf
また、の無限小変換が定義されている必要があるため、必然的に
は連続的でなければならない。
これについては、離散系ではが可換になるという話や、参考文献で基本的に散乱のような連続状態において議論されていることと対応しているように思える。
まずは(量子)リウビル方程式ともっと仲良くなる必要がありそうだ。