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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

和の逆元が唯一つ存在することの証明。

この手の問題は、ついつい当たり前として証明をサボってしまうので、一つ一つ丁寧にやっていくことにする。

 Kにおいて、 a \in Kとすると、

\displaystyle
a + (-a) = 0
となる逆元 -a \in Kが存在する。
 0 \in Kは和において単位元の役割を果たす。

この時、逆元が唯一つしか存在しないことを、単位元 0および逆元の性質、交換律そして結合律を使って証明する。

証明の方法としては、背理法に属すると思われる。
背理法の厳密な定義については、以下を参照。
koideforest.hatenadiary.com

「逆元が -a以外に存在する」と仮定して、そこから「何かしら」の矛盾が引き出せればそこで証明完了となる(仮定の否定が真になる)。

「逆元が -a以外に存在する」を定式化すると、

\displaystyle
a + b = 0 \, ( b \neq -a )
となる。
ここから「何かしら」の矛盾を示せば良いが、「 \neq」が既に現れているため、「 b = -a」を目指せば矛盾を導き易そうだなと発想する。

まずは単位元の性質から、

\displaystyle
  -a = -a + 0
次に、仮定より

\displaystyle
  -a + 0 = -a + ( a + b )
結合律を使って、

\displaystyle
  -a + ( a + b ) = ( -a + a ) + b
交換律を使えば、

\displaystyle
  ( -a + a ) + b = ( a + (-a) ) + b
逆元の性質から、

\displaystyle
  ( a + (-a) ) + b = 0 + b
交換律より

\displaystyle
  0 + b = b + 0
単位元の性質から、

\displaystyle
  b + 0 = b
したがって、 -a = bが言えたので、仮定である b \neq -aと矛盾し、仮定の否定「逆元は -a以外に存在しない」=「逆元は -a唯一つ」が真であることを証明出来た。

上の操作は、結局、「 a + b = 0 \Leftrightarrow b = -a」、つまり「項の移行」を厳密に行ったということに他ならない。
「項の移行」の操作をまとめれば、

  1. 片側の項だけ残す。
  2. 単位元0を出現させる。
  3. 単位元0を元の式で置き換える。
  4. 各元の性質や、各律を使って整理する。

と言える。