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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

球対称関数を別の位置で球平均する

 rを原点から測った距離とし、原点から見て球対称な関数を F( r )とする。
原点から見て位置 {\bf R}_iにあるサイト iがあるとする。
サイト iを原点に取り直した任意の位置ベクトルを {\bf r}_iと定義する。
やりたいことは、 F( r )をサイト iから見ると球対称ではないので、サイト iから見たときの球対称成分 f( r_i )を作りたいということである。
それはすなわちサイト i上で球平均することに対応する。
 {\bf r}_i = {\bf r} - {\bf R}_i、もしくは {\bf r} = {\bf r}_i + {\bf R}_i(こっちの方が直観的かも)であるから、

 \displaystyle
\begin{align}
f( r_i ) = \left( \int d \hat{\bf r}_i \, F( | {\bf r}_i + {\bf R}_i | ) \right) / \left( \int d \hat{\bf r}_i \right)
    = \frac{ 1 }{ 4 \pi } \int d \hat{\bf r}_i \, F( | {\bf r}_i + {\bf R}_i | )
\end{align}

球対称であるから、 {\bf R}_i z軸上に取っても結果は変わらない。
この時、 F( | {\bf r}_i + {\bf R}_i | )は方位角に依存しないから、

 \displaystyle
\begin{align}
f( r_i ) = \frac{ 1 }{ 2 } \int^{\pi}_{0} {\rm sin} \theta \, d \theta \, F( | {\bf r}_i + {\bf R}_i | )
\end{align}

ここで、 \theta {\bf r}_i - {\bf R}_iの成す角である。
マイナスが気になるかも知れないが、最終的にはその動径成分の R_iのみを使うので、符号はあまり重要でない。
 | {\bf r}_i + {\bf R}_i | = \sqrt{ r^2_i + R^2_i - 2 r_i R_i {\rm cos} \theta }であることに注意すると、

 \displaystyle
\begin{align}
&\frac{ d | {\bf r}_i + {\bf R}_i | }{ d \theta }
    = \frac{ r_i R_i }{ \sqrt{ r^2_i + R^2_i - 2 r_i R_i {\rm cos} \theta } } {\rm sin} \theta
    = \frac{ r_i R_i }{ | {\bf r}_i + {\bf R}_i | } {\rm sin} \theta
\\
&\therefore \; {\rm sin} \theta \, d \theta
    = \frac{ | {\bf r}_i + {\bf R}_i | }{ r_i R_i  } \, d | {\bf r}_i + {\bf R}_i | 
\end{align}

よって、

 \displaystyle
\begin{align}
f( r_i ) &= \frac{ 1 }{ 2 r_i R_i } \int^{ R_i + r_i }_{ R_i - r_i } \, d | {\bf r}_i + {\bf R}_i | \, | {\bf r}_i + {\bf R}_i | \, F( | {\bf r}_i + {\bf R}_i | ) \\
    &= \frac{ 1 }{ 2 r_i R_i } \int^{ R_i + r_i }_{ R_i - r_i } \, dr \, r \, F( r )
\end{align}

 r_iの関数として f( r_i )を求めたいので、ここでの扱いは言わばパラメータのように外から与えられるものであり、積分変数ではないため積分の外に出せる。

例として、クーロンポテンシャル F( r ) = Z / r \equiv V( r )を考えると、

 \displaystyle
\begin{align}
V( r_i ) &= \frac{ Z }{ 2 r_i R_i } \left( R_i + r_i - ( R_i - r_i ) \right) = \frac{ Z }{ R_i } \equiv \bar{ V }
\end{align}

となり、違うサイトから見ると定数ポテンシャルとして与えられることになる。
したがって、点電荷が一次元に正負(絶対値は同じ大きさ Z)で交互に等間隔 Rで無限に並んでいて、ある点電荷に働くトータルの静電ポテンシャルは、球平均すれば

 \displaystyle
\begin{align}
V = - \frac{ 2 Z }{ R } \left( 1 - \frac{ 1 }{ 2 } + \frac{ 1 }{ 3 } - \cdots \right) = - \frac{ 2 Z }{ R } {\rm ln}2
\end{align}

と求めることが出来る。
ただ、これは ln( 1 + x )マクローリン展開、つまり x \approx 0に対して速く収束する展開に、 x = 1を代入して得られたものを使用しているわけだから、本当に点電荷がほぼ無限に並んでいないと(ほぼ無限に展開しないと)値の一致は悪いと思われる。クーロンポテンシャルの収束が遅いのがよく分かる。