エネルギー等分配則の本質は、
である。
期待値の計算は、ここでは省略する。
もう少し具体的にハミルトニアンを表すと,
第二項はいわゆる「振動」を与える調和ポテンシャルである。
これがエネルギー等分配則を語る上で、本来最初に宣言するべきハミルトニアンである。
物理化学の教科書では、運動を並進・回転・振動に自由度を分けて、分子が複雑になって行くにつれて少しずつ自由度を足していくような論法が見受けられるが、これでは何が前提になっているのかサッパリ分からない。
エネルギー等分配則自体は、もうこのハミルトニアンから大体計算出来て、
- 単原子分子::
- 二原子分子::
- 直線三原子分子::
- 非直線三原子分子::
ここで、は原子を直線状に拘束するための追加のポテンシャルである。その意味で、直線分子ではそもそものポテンシャルの作り方に気を付けなければならないかも知れない。
いずれにせよ、このように直線分子には拘束ポテンシャルが必要と考えると、物理化学で言われる並進・回転・振動に分解する方法と一致する。
これらを変数変換していき、適切な近似(例えば、剛体回転時の慣性半径に振動の効果を考慮しない等)を施せば、並進・回転・振動の表記にできる。
調和ポテンシャルが振動に寄与するのは明らかなので、ハミルトニアンから始める方が「何故振動の自由度だけなのか?」を説明し易い。
ちなみに、二原子分子のエネルギー等分配則でと説明されるが、それは実験に合わせるために振動の自由度を凍結させるからであり、「全ての自由度に等しいエネルギーが分配される」という真の意味のエネルギー等分配則からすると近似表現である。
さらに、この方法を一般化した場合、例えば非直線五原子分子だと、となるが、並進・回転・振動に分解する方法だととなる。
これは、並進・回転・振動に分解したときに、どこかのポテンシャル(おそらく一番遠い原子間のポテンシャル)を無視していることに対応しており、並進・回転・振動に分解する方法がやはり近似的な手法であることがわかる。
とはいえ、例えば「室温付近では振動の自由度は考えないことで実験を説明できる」等、並進・回転・振動の分解は有益な情報を齎すし、何より一般的なハミルトニアンが与える実際の運動を理解するために結局は並進・回転・振動に分解するので、最終的には必要である。
参考文献
http://phys.sci.hokudai.ac.jp/~kita/StatisticalMechanicsI/Stat6.pdf
エネルギー等配分の法則 - Wikipedia