nano_exit

基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

ローレンツブーストとローレンツ収縮

名前的に非常にややこしい。ブーストするのか収縮するのかどっちかにして欲しいところである。

ざっくり言えば、

  • ローレンツブースト:観測者(静止系)に対して、運動している系の座標軸は運動方向に伸びる(時間軸も同時に影響を受ける)。
  • ローレンツ収縮:(ローレンツブーストの結果)静止系から見て、運動している物体は縮んで見える。

であろう。

ポイントは、

  • 与えられた(固定する)パラメータが、観測者(静止系)と運動系のどちらに属するものか

と思われる。

一次元系に話を絞る。
静止系( x(t), t )と速度 vで運動している運動系 ( x'( t' ), t' )を考える。
ローレンツ因子を  \gamma = 1 / \sqrt{ 1 - v^2/c^2 } と定義しておく(したがって \gamma > 1 )。

観測者を静止系に取る(つまり、あんまり何も考えなくて良い場合)。
ロケット(運動系)の x'座標は、観測者(静止系)のパラメータ x, tを使って(基準にして)、

 \displaystyle x' = \gamma( x - v t )

と与えられる。
座標が伸びていることをわかり易くする為、静止系から見て v_0で運動しているガンダムを別に考える( v_0は静止系に属するパラメータ)。
観測者、ロケット、そしてガンダム t = t' = 0 の時に原点に居たとする。
つまり、t秒後には観測者(静止系)から見てガンダム ( v_0 t, t ) に居ることになる。
この時に、ロケット(運動系)からガンダムはどう見えるかと、

 \displaystyle x' = \gamma( v_0 t - v t ) = \gamma ( v_0 - v ) t

であり、 \gamma > 1であるから、非相対論(ガリレイ変換)に比べて差が大きくなっていることがわかる。
これはローレンツブーストによって座標が伸びた帰結である。

(ちなみに、「観測者(ロケット)から見たら」というのは x (x')の値がどうなるか、ということを言っている。)

で、これだけ見ると何でもかんでも(ロケットから見ると)長くなるように思ってしまうが、ロケット上でのパラメータが基準となるものは逆になる。
「観測者のパラメータを基準に取った時、ロケットから見ると長さが長くなる」ということは、例えば、「ロケット上から見たロケットの長さ L'は、観測者から見ると短い長さ L( < L' ) に見える」ということと同義である。
(ロケットが地上から宇宙に「加速して」飛び立つということを考え始めると一般相対論の範疇なので、ロケットが速度を持つ過程は省略するが、)元々のロケットの長さは作成時に L'と決まっていて、ロケットが飛んでいる時でも「ロケット上から見たら」長さは L'である。
一方で、止まっている観測者から見ると、(ユニットを分離したり、先端が凹んだりしない限り)変わらないはずのロケットの長さが Lに縮んで見えてしまう。
これが「ローレンツ収縮」と言っていることである。
この場合には、そもそも観測者からは縮んで見えているので、そこからロケットでは伸びて見えると言っても、結局は元の長さで見えるというだけの話である。

静止系と運動系、どちらのパラメータを固定するべきかで見え方が変わるので、非常にややこしい。。。