nano_exit

基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

ミクロカノニカルとカノニカル

ただの愚痴であるが、位相空間が苦手である。
大抵、ミクロカノニカル分布から入ると思うが、その説明に

が使われる。
その中で一番状態数の多い状態が平衡に対応するとし、変分をかまし、最後にマクスウェル-ボルツマン分布を得る。

正直、これだけよくわからんものをホイホイ導入されて、これをとにかく納得しろという方が無理。そもそもイメージ出来ないし。
あと、これで持って来られるとカノニカル分布との対応が非常にわかりにくい。
てかカノニカル分布と同じノリじゃダメなの?と思う。

カノニカル分布は

  • エネルギーで状態が指定される箱(系)を用意。
  • 箱を複数連結させる。これを集団(アンサンブル)と呼ぶ。
  • 箱の間でエネルギーのやり取り可能。
  • 集団全体でエネルギーは固定。
  • 集団のエネルギー = 箱1 + 箱2 + 箱3 +...
  • 全部の箱のエネルギーが一定とは全く限らないから、箱同士のエネルギーの奪い合いが、今、始まる!

的な感じで、

全体のエネルギーが保存する様に各箱にエネルギーを割り振ったときに、どんな風にエネルギーを割り振るのが一番可能性が高いか?

となる。
「箱の間のエネルギーのやり取り可能」と書きましたが、正直ここは僕はこの表現嫌いです。
「やり取りがあるからエネルギーが割り振れる」という立場からすると、必要と感じますが、やり取りを真面目に考えると箱のエネルギーを独立に足せないし、割り振っている間のエネルギー移動のプロセスは全く気にしないので、個人的には、「箱同士は独立に扱い、それらのエネルギー状態は確率的に発生する」とした方がしっくりくる。下手に物理的に扱うと変なことになる気がする。

ちなみに、全部の箱にエネルギーを均等に割り振る場合の数は「1通り」しかないから、ほとんど発生しない
箱1のエネルギーがちょっと高くて、その代わりに箱2のエネルギーがちょっと低いのは、その逆もあるし、箱2じゃなくて箱3が低くても良いから、こういう方が場合の数が多くなる。そして結果的にエネルギー分布が出来るのがわかる。
それでエネルギーの保存とか粒子数の保存とかの制限が入って、カノニカル分布と言われるものが得られる。

これをミクロカノニカルにそのまま転用すれば、

  • エネルギーで状態が指定される粒子を用意。
  • 粒子を箱の中に入れる。
  • 粒子間でエネルギーのやり取り可能
  • 箱でエネルギーは固定。
  • 箱のエネルギー = 粒子1 + 粒子2 + 粒子3 +...
  • 粒子の箱のエネルギーが一定とは全く限らないから、粒子同士のエネルギーの奪い合いが、今、始まる!

で良くない?
ここでもカノニカルのときと同じで、粒子は独立だけど確率的にエネルギー状態が発現して、箱でエネルギーが保存していなければならないから、全ての粒子のエネルギーが等しいのではなく、マクスウェル-ボルツマン分布に従う形になる。

逆に、粒子が独立じゃなくて箱のエネルギーを各粒子の和で書けないから、いっそ箱単位の扱いに拡張しようというのがカノニカル分布だと理解した。
例えば「クーロン相互作用のある電子の集団」を考えたとき、ハートリー・フォック近似で独立粒子近似をしたとしても、全エネルギーは各粒子の和にはならない。そのまま足すと相互作用を二重に数えてしまう。

何となく、バンド計算とかを齧っていると、
ミクロカノニカル → カノニカル
unit cell → supercell
な対応に近いなぁとも最近思う。
例えばunit cellに原子一個だけとかだと、原子一個解いてあと並進対称性でズルすればよいけど、不純物が入っているとかなんとかでsupercellにすると、その大きいセルの中で真面目に解かないといけなくなる。

一応、言及しておくが、等重率の原理は使っている。場合の数を数えるときにはすべて同じ重みで扱う。
更に言及しておくが、多分、田崎先生の統計力学に似たようなことが書いてあったと思う。
今、手元にないので、割と適当なことを言ってしまっていると思う。
でも、阿部大先生の本の1章読んでて、やっぱり位相空間から入るのは性に合わないと感じた。