T行列は元々サイトポテンシャルの展開で以下の様に定義されている。
しかし、「違うサイトへの伝搬」と「同じサイト内での多重散乱」が混在しており、実際の計算には非常に不便である。
そこで、同じサイトのポテンシャル散乱を繰り込んだサイトT行列を定義すると、サイト内の多重散乱とサイト間の伝搬を分けることができる。これがいわゆる多重散乱展開である。
サイトT行列間の伝搬の際には、かならず異なるサイトへ行くため、散乱のイメージが付きやすい。
注意として、あるサイトから他サイトに伝搬した後、もう一度同じサイトに戻って来ることは可能である。
この考えを更に進めて、サイトを各集合に分類し、それをセルと呼ぶことにすると、セル内の多重散乱とセル間の散乱に分けることができる。セル内の多重散乱を繰り込んだものをセルT行列と定義すると、
ここで、セルに含まれてるサイトは、和を取ると全サイトの和に等しくなるように定義している。
注意として、セル間の散乱といえども、伝搬はあくまでサイト間である。「サイト同士が必ず異なるセルに属するような散乱」を「セル間の散乱」とここでは呼んでいる。
まとめると、
以下、もう少し細かく説明する。
- サイトT行列展開
サイトの和から、あるサイトだけを抜き出してを作ることを考える。
したがって、三次までで整理すると、
級数の中でがやがてになっていくことが何となく感じられたと思う。
ポイントは、から移るときには必ず異なるサイトへ行くようになっていることである。
他のサイトに関しても同様にを作るように抜き出していくと、最終的にサイトT行列展開が得られる。
- セル行列展開
サイトT行列展開の時と同様に、サイトの和からあるセルに含まれるサイト集合を抜き出してを作ることを考える。
異なるセルに属していれば、サイトが被ることは無い。
したがって、三次までで整理すると、
級数の中でがやがてになっていくことが何となく感じられたと思う。
セルのみを抜き出したため、の和はとなる場合があることに注意。そのために同じサイトへの伝搬が無い様に和が複雑になっている。
他のセルに関しても同様にを作るように抜き出していくと、最終的にセルT行列展開が得られる。