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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

ラグランジュアン:位置と運動量は独立か?

独立ではない(でもついこの間まで良くわからずにいた)。
紛らわしい理由として、

  •  L( q, \dot{q} )と書かれているからついつい。
  • その導出過程で \int ( \frac{\partial L}{\partial q } \delta q + \frac{\partial L}{\partial \dot{q} } \delta \dot{q} ) dt = 0  となっているからついつい。

という感じだろうか?

そもそも \dot{q} = \frac{ dq }{ dt }であるから、独立な訳がない。
というか、偏微分している時点で、独立じゃないけど別々に微分しますよ~ということを宣言しているので、別々に微分していることが独立性を表すことに全くならない。

大元に立ち返ると、 q, \dot{q} tの関数である。なので、言ってしまえばラグランジュアンは L(t)とだけ書いても良いぐらいである。言い換えると、 q, \dot{q}の形が求まった後に、ラグランジュアンを求めると、結局 tしか出て来ない訳で。
じゃあ何で結局全部tの関数なのにわざわざ q, \dot{q}で書くのか?というと、そうすることで Lを理解し易い、利用し易い、実験に合う、Newton力学と整合する、などなどというメリットがあるからである。
じゃあ何で関数の中身を区切るだけでそんな変わるのか?というと、関数を見る視点が変わるから、とでも言いましょうか。

例として、 f(t) = t^5を考えたときに、 l = t^3, m = t^2と勝手に決めると、 f(l, m) = l \times mとなる。 f(l, m)は明らかに l,mに対して線形である。大元の tの5次のまま見ても良いが、直線関係にあるもので 特徴付けられるならば理解し易い気がしないだろうか?ちなみにこの場合、 l,mは好き勝手な値が取れるわけではなく、 l = m^{3/2}であり、 lm平面上で曲線を描くと思っても良いし、媒介変数の立場を取ればパラメータ tによって軌跡が描かられると思っても良い。
今は、勝手に作った関数で物理的意味は特になく、変数を変えることにあまり旨味が無いかも知れないが、実際に位置や運動量、圧力、体積、磁場と言った意味を纏った量でエネルギーなどの物理量を記述するとなると、それぞれが既に何かの関数になっているかも知れないが、一つの変数として見て法則性があった方が解釈し易かったり制御し易かったりするわけである。


上では、 L(t)が求まった後にそれを q(t),\dot{q}(t)に分配するという立場で話をしてきた。
元々やりたいことは逆で、、各時刻 tにおいて \delta qの無限小変位を加えたときに作用が変化しない(極値を取る)ような qは何ですか?ということである。このとき \dot{q}も変位 \delta \dot{q}を受ける。これらも独立ではなく、 \delta \dot{q} = \frac{d \delta q }{dt}である。ちなみに、 \delta q \delta tに対する変位ではないことに注意。時間の変位は考えておらず、それとは無関係に加えている。というか、時間積分だからその中で時間の変位を与えるとおかしくなる。
ごちゃごちゃ書いたが、要は、
 \displaystyle \delta S(t_A, t_B) = \int^{t_B}_{t_A} ( L( q + \delta q, \dot{q} + \delta \dot{q}, t ) - L( q, \dot{q}, t ) ) dt = 0

これに関して、全微分 d L(t)、すなわち何らかの変位が起こったときのラグランジュアンの一般的な変化がわかれば、 dt=0のときの全微分を使えば良いから話が終わる。
多変数を引数に持つ関数の全微分偏微分を用いて書かれる。

 \displaystyle d L(q,\dot{q},t) = \frac{ \partial L(q,\dot{q},t) }{ \partial q } dq + \frac{ \partial L(q,\dot{q},t) }{ \partial \dot{q} } d \dot{q} + \frac{ \partial L(q,\dot{q},t) }{ \partial t } dt

それで、本当に一変数の全微分と勝手に区切ったなんちゃって多変数の微分達の和が一致するか f(t)で確認すると、例えば t微分すると、

 \displaystyle \frac{ d f(t) }{ d t } = 5 t^4
 \displaystyle \frac{ \partial f(l,m) }{ \partial l } \frac{ \partial l }{ \partial t } + \frac{ \partial f(l,m) }{ \partial m } \frac{ \partial m }{ \partial t } = m \cdot 3t^2 + l \cdot 2t = 5 t^4

となり、勝手に区切っても正しい微分の手続きを踏めば問題無いことがわかる。

話をまとめると、 L(t) tの関数(時間で積分すると作用を返す関数)だけど、任意の関数 q(t),\dot{q}(t)で表現しても良く、これらの変位に対して作用が極値を取るような条件(制限)がラグランジュ方程式であり、この制限下で q(t),\dot{q}(t)が上手いこと軌跡を描く、ということだと理解している。

実際にラグランジュアンに形を与える際、例えば等速直線運動のときの運動エネルギーを考えると、 tを介さずに、ガリレイ変換の対称性からほぼ直接 \dot{q}の依存性( m \dot{q}^2 / 2)がポンっと出てくるから、余計に q, \dot{q}が独立変数だと思ってしまうかも知れない。
むしろ任意の関数で表現しても良いから、対称性等のアプローチでラグランジュアンの形を大枠で推定出来ると思う方が無難かも知れない。