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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

無限級数の部分和による近似。

無限級数を部分和に分解したときに、相対誤差がどのようになるかを考察してみた。
無限級数を以下のように定義する。

\displaystyle
\sum_{n = 0}^\infty c^n
  = \frac{ 1 }{ 1 - c }
  \quad ( 0 \le c < 1 )

この無限級数を次の様に部分和で近似してみる。

\displaystyle
\frac{ 1 }{ 1 - c } = \frac{ 1 }{ 1 - ( \alpha + ( 1 - \alpha ) ) c }
\\
\displaystyle
\quad
\approx  \frac{ 1 }{ 1 - \alpha c }  + \frac{ 1 }{ 1 - ( 1 - \alpha ) c  } = \frac{ 2 - c }{ 1 - c + \alpha( 1 - \alpha ) c^2 }
  \quad ( 0 \le \alpha \le 1 )

この近似の相対誤差は、

\displaystyle
\left( \frac{ 1 }{ 1 - \alpha c }  + \frac{ 1 }{ 1 - ( 1 - \alpha ) c  } \right) / \left( \frac{ 1 }{ 1 - c } \right) = \frac{ 2 - 3 c + c^2  }{ 1 - c + \alpha( 1 - \alpha ) c^2 }
f:id:koideforest:20190915161708p:plain

更に、 \alpha = 0, 1で元の無限級数に一致させるために、重み付けして和を取ると、

\displaystyle
\frac{ 1 }{ 1 - c }
\approx  \alpha \frac{ 1 }{ 1 - \alpha c }  + ( 1 - \alpha ) \frac{ 1 }{ 1 - ( 1 - \alpha ) c  } = \frac{ 1 - 2 \alpha ( 1 - \alpha ) c }{ 1 - c + \alpha( 1 - \alpha ) c^2 }
この相対誤差は、
f:id:koideforest:20190915161655p:plain

また、一部の部分和のみを取る場合、

\displaystyle
\frac{ 1 }{ 1 - c }
\approx  \frac{ 1 }{ 1 - \alpha c }
その相対誤差  ( 1 - c ) / ( 1 - \alpha c ) は以下のようになる。
f:id:koideforest:20190915161639p:plain
 cが1に極めて近いとき、 \alphaが1からちょっと小さくなっただけで、相対誤差がかなり大きくなる(ゼロに近い=元に比べてすごく小さくなっている)。

この「一部の部分和のみを取る近似」を、 c > 1 の範囲にまで拡張してみてみると、
f:id:koideforest:20190915163122p:plain
 c \rightarrow \inftyの時、相対誤差は ( 1 - c ) / ( 1 - \alpha c ) \rightarrow 1 / \alphaに収束するが、その様子が表れている。
量子力学における、部分和による繰り込みで、「繰り込む項を増やすとどうなるか」についての何となくイメージを掴みたくてやってみたが、「 \alpha をどれだけ1に近づけられるか」という視点で近似を眺めれば、最強発散する項だけ拾うのは理に適っているように感じた。