以前、球対称ポテンシャルの時の位相シフトとT行列についてまとめた。
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今回は、非球対称の時に両者がどのように結ばれるかを調べる。
前回と同様、外側で値を持たないポテンシャルに対する外側の波動関数は、一般に次のように書ける。
前回と同様、Lippman-Scwinger方程式を用いて解を表す(Hartree原子単位)。
次にがポテンシャルの範囲の外側の時を考える。
ここまでの流れは、前回と完全に同じだが、ここから非球対称ポテンシャル、すなわち行列が角運動量に対して非対角成分を持つ場合を考える。
これを参考にして、外側の解の一般解を拡張する。
球対称の時、、となる。
したがって、との関係は、
一見、球対称の時の自然な拡張っぽくなっていて、上手く行きそうだが、の時、
となり、非対角項を上手く記述することが出来ない。
これはある意味当たり前で、「元々の自由解は純粋な球ベッセル関数だけどポテンシャルの影響でどれくらい球ノイマンが混ざったか」を見るのが位相シフトであるにも関わらず、自由解では存在しない非対角項を無理矢理に球ベッセル関数と比較しようとしたところで、球ハンケル関数の性質がただ反映されるのがオチである。
したがって、T行列は対角項のみが位相シフトと関係を持ち、非対角項を位相シフトで表すことは出来ない。