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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

剛体の運動:ヨビノリの動画の補足

剛体は結局学部ではやらず、研究室のゼミでやるわけでもなく、独学だったのでヨビノリで復習してみた。
多体問題として剛体を見ると、かなり面白いと感じざるを得ない。

ここでは自分の理解のために、そこで出てくる数学的事項等を自分の好みに合わせて補足してみた。

【大学物理】剛体の力学入門①(特徴と魅力)/全6回【力学】 - YouTube

  • 相対位置が不変

相対位置と言ってしまうとと、ベクトルが変わったらアウトなので、並進のみが許され、回転は出来ないと思われる。
なので、ここでは「相対『距離』が不変」の方が個人的にはしっくり来た。

  • 重心について

当たり前のように、我々は「重心」というワードが普段使っているが、よく考えると「重心」は使われ方が曖昧な言葉で、また物理で意味する重心は「剛体の運動方程式」によって意味を持つようになる(定義される)。
例えば、数学で「三角形の重心」と呼ばれる点は、正確には「幾何中心」であり、また三角形の各点がそれぞれ違う重さを持っているとすると、物理的な意味の重心(質量中心)は幾何中心からズレる。
そのため、既に「重心」を知っている体で剛体の話を始めると、後々「重心って何だ?」という罠にハマる気がした。
重心 - Wikipedia

【大学物理】剛体の力学入門②(重心の運動)/全6回【力学】 - YouTube

  • 作用反作用の法則から、相互作用項が落ちる。


\displaystyle
\sum_i \sum_j' \vec{f}_{ij} = \sum_{i \neq j } \vec{f}_{ij} = \sum_{ i > j } \left( \vec{f}_{ij} + \vec{f}_{ji} \right) = \sum_{ i > j } \left( \vec{f}_{ij} - \vec{f}_{ij} \right) = 0

【大学物理】剛体の力学入門③(回転運動)/全6回【力学】 - YouTube

  • 相互作用項が外積の場合でも落ちる。


\displaystyle
\sum_i \sum_j' \left( \vec{r}_i \times \vec{f}_{ij} \right) = \sum_{i \neq j } \left( \vec{r}_i \times \vec{f}_{ij} \right) = \sum_{ i > j } \left( \vec{r}_{i} \times \vec{f}_{ij} + \vec{r}_{j} \times \vec{f}_{ji} \right)
\\
\displaystyle
= \sum_{ i > j } \left( \vec{r}_{i} - \vec{r}_{j} \right) \times \vec{f}_{ij} = \sum_{ i > j } \left| \vec{r}_{i} - \vec{r}_{j} \right| \hat{ f }_{ij} \times \vec{f}_{ij} = 0
\\
\displaystyle
\left( \hat{ f }  = \vec{ f } / | \vec{ f } | \right)
(「位置ベクトルの差」と「力の方向」が並行というのは、式だけ弄っていると気付きにくいので、こういうところは物理やっている感じがして個人的に好き。)

  • 重心からの相対位置 \vec{r}'の満たす性質 \sum_i m_i \vec{r}'_i = 0について

これを、ある種の重心の定義としても良いと思うので、定理として強調した方が個人的には好き。

【大学物理】剛体の力学入門④(慣性モーメントの定義)/全6回【力学】 - YouTube

  • 固定軸を入れることで、自由度が6から1に減る件について

個人的には、最初の相対距離不変のところで出した「自由度6」の話をもう一度出して繋げた方が分かりやすいと思った。

  1. 一点目:自由度3
  2. 二点目:自由度2
  3. 三点目:自由度1
  4. 四点目以降:自由度0

固有軸を入れることで、一点目と二点目が固定されてしまう(自由度0)ので、自由度が1だけ残る。

  • 慣性モーメントを出す時に、角度は積分変数なのに、角速度は積分の外に出せる件について

正直、この部分の説明が無かったために、この記事を書いてる感はある。
角度は各点で異なるが、相対距離が不変に保たれていると、角速度が位置に依らないことを示す。
動画と同様に円筒座標を取り、その時の二点 \vec{r}_1, \vec{r}_2を考える。
z軸周りの回転のみを扱うと、時間に依存するのはxy平面内の角度 \varphiのみだから、

\displaystyle
\left| \vec{r}_1 - \vec{r}_2 \right| = c \rightarrow \left( \vec{r}_1 - \vec{r}_2 \right)^2 = c^2 \rightarrow \frac{ d }{ dt } \left( \vec{r}_1 - \vec{r}_2 \right)^2 = 0
\\
\displaystyle
\left( \vec{r}_1 - \vec{r}_2 \right)^2 = ( x_1 - x_2 )^2 + ( y_1 - y_2 )^2 + ( z_1 - z_2 )^2
\\
\displaystyle
  = r^2 ( \cos \varphi_1 - \cos \varphi_2 )^2 + r^2 ( \sin \varphi_1 - \sin \varphi_2 )^2 + ( z_1 - z_2 )^2
\\
\displaystyle
  = r^2 ( \cos^2 \varphi_1 + \sin^2 \varphi_1 ) + r^2 ( \cos^2 \varphi_2 + \sin^2 \varphi_2 ) -2 r^2 ( \cos \varphi_1 \cos \varphi_2 + \sin \varphi_1 \sin \varphi_2 ) + ( z_1 - z_2 )^2
\\
\displaystyle
  = 2r^2 -2 r^2 ( \cos \varphi_1 \cos \varphi_2 + \sin \varphi_1 \sin \varphi_2 ) + ( z_1 - z_2 )^2
\\
\displaystyle
  = 2r^2 -2 r^2 \cos ( \varphi_1 - \varphi_2 ) + ( z_1 - z_2 )^2
\\
\displaystyle
\therefore
2 r^2 \sin ( \varphi_1 - \varphi_2 ) ( \dot{ \varphi}_1 - \dot{\varphi}_2 ) = 0
特別な二点を選ばない限り \sin( \varphi_1 - \varphi_2 ) \neq 0 は成り立たない。
したがって、 \dot{ \varphi}_1 = \dot{\varphi}_2 、つまり角速度 \dot{ \varphi }は固定軸を通すと位置に依らなくなる。
これにより、角速度を積分の外に出しても問題ない。

【大学物理】剛体の力学入門⑤(慣性モーメントの性質)/全6回【力学】 - YouTube

  • 原点の取り方について、

hを「任意の回転軸」と「それに並行で重心を通る回転軸」との距離とすると、 I = I_G + Mh^2として、慣性モーメントが求まるが、この時に原点は「任意の回転軸」上のどこかに置かないと答えが変わってしまう(or 計算するのが面倒臭い)ため、原点の取り方が地味に重要。

【大学物理】剛体の力学入門⑥(力学的エネルギー)/全6回【力学】 - YouTube

  • 慣性モーメントが質量 m r^2を掛けたような形になる件について

いつも慣性モーメントの形( r^2を掛けなくては行けない理由)を忘れてしまうので、原点の並進運動と比較している時に言及する方が個人的に好み。
回転運動は、速度のうち角速度のみで十分なので、円弧上の速度までは必要ない。そのため運動エネルギーにおいて、円弧から動径を抜き出した「角速度の二乗」で表そうとすれば、抜き出された「動径の二乗」が質量項にくっつき、これが慣性モーメントとなると思えば覚え易いと思った。