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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

単振り子の問題がパッと受け入れられない件について

単振り子の振動の振舞を求める問題は、単振動の典型的な例題の一つであるが、何かしっくり来ない。
単振り子 ■わかりやすい高校物理の部屋■
単振り子を徹底解説!近似の使用法&運動方程式から周期を導出する方法
単振り子:運動方程式

そのため、しっくり来ない点について考えてみた。

  1. 考えなきゃいけない力が何となく残っている気がする。
  2. 円弧の長さがパッと思い付かない。
  3. 求める軌跡が直交座標 x, yではなく、円弧 s上の運動。
  4. 円弧に対する接線方向と角度の関係がパッとわからない。
  5. 単振動の場合、振動が微小(角度 \thetaが微小)として \sin関数を線形近似するのがズルく感じる。
  6. 当たり前の様に T = 2 \pi / \omegaと説明されるが、スッとそこに行けない。
  7. 単振動を超えた一般の運動方程式を扱うときに、回転運動の話(求心力・遠心力)が急に入って来る。

1. 考えなきゃいけない力が何となく残っている気がする。

例えば、天井と糸の間に働く力などは普通は省略して図が描かれている。これらの力は、作用・反作用で釣り合っているため、運動方程式中では打ち消しあってゼロになり反映されない。
しかし、よくよく考えると、図示出来ない力があることに気が付く。それは、「天井が受ける作用(今の場合、糸に引っ張られる力)を打ち消すための力」である。
例えば、物を平らな床の上に置いたとする。物が動かないのは、重力と床が押し返す反作用が釣り合っているからと説明される。しかし、床は作用を受けっ放しであり、そのまま真に受けると床は沈んでしまう。
実際には、床の下の木材やら基礎やら何やらに全部力が伝わって、最終的には地面に力が伝わることになる。そうすると、次の疑問として、「地面を押したとき、地球を反対側から支える力はないから、(どんなに小さくても)原理的には地球は動くのか?」ということになる。
答えは(あまりに小さ過ぎて観測できないが)"YES"である。
地球上の人間が一斉にジャンプするとどうなるのか : Spookie's
したがって、安心して振り子の運動方程式に重要な力のみを考えれば良い。

2. 円弧の長さがパッと思い付かない。

半径 l の円において、ラジアン単位の角度 \thetaに対する円弧の長さ sは、「 s = l \theta 」で与えられる。
これがしっくり来なかった。
原因は、「円周=円周率 \times 直径 =  \pi \times 2 l 」で覚えていたからだと気が付いた。
そうではなく、「円周 =  2 \pi \times 半径 =  2 \pi \times l 」だから、任意の角度にすぐに一般化して「円弧=角度 \times 半径 =  \theta l 」と理解できる。

3. 求める軌跡が直交座標 x, yではなく円弧 s上の運動。

例えば、それまでバネの単振動とかやっていると、一次元方向の xだったり、鉛直方向の zだったりして分かり易かった。
しかし、振り子になって問題が二次元になり、力の方向が軌跡に沿っていないため、軌跡を何に設定するかという点において、大きな飛躍を感じてしまう。そもそも軌跡を直交座標ではなく何故「基準点から測った円弧の長さ」に設定するのか?という点に対し、「そうすれば簡単に解ける」というようなノリが多い気がする。
個人的には、そこをもう少し掘り下げて、「知りたいのは単振り子の角度 \theta (t)で、その角度と円弧が \theta = s / lで一対一対応するから」とかの説明が欲しかった。

4. 円弧に対する接線方向と角度の関係がパッとわからない。

これが正直最も大きい問題かも知れない。
毎回、図示して確認するが、接線方向の成分が \sinなのか \cosなのか、いまいち自信が持てない。
以下のサイトの図で見れば、同位角の関係だけ使っているので、まだわかる気がする。
単振り子:運動方程式

5. 単振動の場合、振動が微小(角度 \thetaが微小)として \sin関数を線形近似するのがズルく感じる。

角度 \thetaが微小な時、 \sin\theta \approx \theta = s / l として近似することで、単振動の運動方程式が得られる。
多分、「単振り子の問題を解きます!」ってノリで近似が入ると、急に各論っぽくなって脳の負荷が上がる気がする。
そうではなく、先に単振動の運動方程式の一般形を持って来ておいて、「単振り子の中に隠れている単振動を見つける」というような体であれば、目的がハッキリして近似も受け入れ易くなる気がする。

6. 当たり前の様に T = 2 \pi / \omegaと説明されるが、スッとそこに行けない。

個人的には、振動が \sin( \omega t )の形で表されるから、 \omega T = 2 \pi と書かれた方が分かりやすい。
 \omegaが時間の逆数だから、逆数の逆数になるとちょっと脳の負荷が上がってパッとわからない。

7. 単振動を超えた単振り子の運動方程式を扱うときに、回転運動の話(求心力・遠心力)が急に入って来る。

回転運動を学ぶのが後の方だったりするときに、先取りして単振り子の一般的な運動方程式を扱おうとすると、「単振り子ってよく分かんない」というイメージが付いてしまう気がする。
個人的には、回転運動を勉強した後に単振り子の運動方程式を出して、角度の小さい時には単振動をすることを示した方がスッキリして良い気がするが、全体のカリキュラム的には振動の方が先だから、単振り子の単振動としての役割は小さいかもしれない。


結局のところ、こんな風に自分で何が気に食わないかを考えることが、問題を受け入れることの最短経路なんだろうなぁ悟った次第である。