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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

スツルム=リウヴィル型微分方程式の表示について

任意の二階の線形微分方程式を次のように書く。

 P(x) \frac{ d^2 f(x) }{ d x^2 } + Q(x) \frac{ d f(x) }{ d x } + R(x) f(x) = 0 (1)

物理でよく出て来る微分方程式(例えばシュレーディンガー方程式等)は大体 P(x)が定数で出て来る。
しかし、物理でよく出て来る特殊関数はスツルム=リウヴィル型の微分方程式の解であり、次の形で表される。

 S(x) \frac{ d^2 f(x) }{ d x^2 } + S'(x) \frac{ d f(x) }{ d x } + T(x) f(x) = 0 (2)

ここで S'(x) = \frac{ d S(x) }{ d x }で、見易くするために使った。
この式を変形すると、

 \frac{ d }{ d x }( S(x) \frac{ d f(x) }{ d x } ) + T(x) f(x) = 0 (3)

と表せる。
特殊関数が満たす微分方程式の形はこちらの表示でよく記述されることが多い。
これが割と不満だった。物理で自然に出てくる微分方程式に特殊関数解が隠れているかを見たいのに、どう考えてもパッと見てチェックするには不便な表示だと思っていたからである。
しかし(2)の表示にしようとすると、(1)からどうやってS(x)をどう作り出すかで見易さが全然変わってしまう。

とモヤモヤしていたら、(1)から(3)へ一般に変形する方法があった。

 P(x) \frac{ d^2 f(x) }{ d x^2 } + Q(x) \frac{ d f(x) }{ d x } + R(x) f(x) = 0
 \frac{ d^2 f(x) }{ d x^2 } + \frac{ Q(x) }{ P(x) } \frac{ d f(x) }{ d x } + \frac{ R(x) }{ P(x) } f(x) = 0

ここに任意の関数 S(x)を全体に掛ける。

 S(x) \frac{ d^2 f(x) }{ d x^2 } + S(x) \frac{ Q(x) }{ P(x) } \frac{ d f(x) }{ d x } + S(x) \frac{ R(x) }{ P(x) } f(x) = 0

スツルム=リウヴィル型にするためには、 S(x) \frac{ Q(x) }{ P(x) } = S'(x)が条件となる。
よって、

 \frac{ S'(x) }{ S(x) } = \frac{ Q(x) }{ P(x) }
 \int dln( S(x) ) = \int dx \frac{ Q(x) }{ P(x) }
 S(x) = exp( \int dx \frac{ Q(x) }{ P(x) } )

とS(x)が求まり、 T(x) = S(x) \frac{ R(x) }{ P(x) } と思えば(3)の表記が得られる。
だから(3)の表記でよく微分方程式が書かれているんだなぁと納得した。

追記(2018/11/21)
(3)の形に変換することをLioville変換と呼び、(3)の形によって微分演算が自己随伴であることが明確になる。
http://user.numazu-ct.ac.jp/~hmatsu/senkou0905.pdf
http://hb3.seikyou.ne.jp/home/E-Yama/SturmLiouville.pdf