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基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

モンティ・ホール問題とシュテルン=ゲルラッハの実験

モンティ・ホール問題
モンティ・ホール問題 - Wikipedia
モンティとはテレビの司会者的な存在らしい。
ルールは以下の通り。

(1) 3つのドア (A, B, C) に(景品、ヤギ、ヤギ)がランダムに入っている。
(2) プレーヤーはドアを1つ選ぶ。
(3) モンティは残りのドアのうち1つを必ず開ける。
(4) モンティの開けるドアは、必ずヤギの入っているドアである。
(5) モンティはプレーヤーにドアを選びなおしてよいと必ず言う。
プレーヤーはドアを選び直すべきか?

wikipediaを見る限り、相当盛り上がった問題だった模様。
実際自分も普通に間違えた。
答えは「選び直すべき」であり、景品の当たる確率は2/3である(選び直さなければ1/3)。

ポイントは「司会者の開ける扉がプレーヤーの選択に依存しているということ」と解釈した。
だから条件付き確率を使わなければ計算出来ない問題となる。
プレーヤーが選択する前に、モンティがヤギの扉を開けるルールだったなら単純に当たる確率は1/2で差はなくなる。

この操作の順序によって確率が変わるのは、量子力学のシュテルン=ゲルラッハの実験の応用問題を彷彿とさせる。

(1)電子の集団からz軸プラス方向のものを抜き出す。この時、電子数は半分になる。
(2)その中から更にx軸プラス方向のものを抜き出す。この時、電子数は半分になる。
(3)その中から更にz軸プラス方向のものを抜き出す。
最後に得られる電子数は元の何分の一か?

量子力学におけるスピンの振舞をキチンと説明しないと理解して貰えないだろうが、答えは1/8になる(はず)。
最初にz軸方向のものを抜き出していたんだから、x軸方向に抜き出した後にまたz軸方向で抜き出しても電子数は変わらない、と思ってしまうかも知れないがそうではない。
スピンの検出では検出の軸を決定すると、それに対してプラスかマイナスかしか検出できない。その間の斜め方向とかは無い。斜め方向に向いていた場合、それは検出軸に対して検出されるプラス・マイナスの数の比で表される。誠に不思議な話であるが、自然がそうなっている。
スピンに対して直交した検出軸を用いた場合には、検出軸に対するプラス・マイナス方向のスピンが半々で出てくる。
つまり、x軸プラス方向に向かせてからz軸プラス成分を抜き出そうとすると、また半分になってしまうのである。

量子力学では操作の順番が重要なケースが多いが、量子力学でなくても人間の直感がなかなか及びにくい領域であることがモンティ・ホール問題で明らかになったと思われる。