nano_exit

基礎的なことこそ、簡単な例が必要だと思うのです。

初等的な縮退の話

サクライの章末問題に載っててフムフムとなった縮退の話。

演算子 A_1, A_2が互いに交換せず( [ A_1, A_2 ] \neq 0)、かつそれぞれがハミルトニアンと同時固有状態を作るとする [ A_1, H ] = 0, [ A_2, H ] = 0
このときに、一般に縮退が存在することが証明出来る。

これを真っ向から挑む場合に、必要十分であることを言うのはなかなかしんどい気がする。ホワンとした証明しか思いつかん。
これは背理法を使うと結構スッキリ話を持って行けて気持ちいい。

背理法として、縮退が無いとまず仮定する。あるエネルギー固有状態 |E_i> A_1固有値 a^{(1)}_iでラベル付けるか、 A_2固有値 a^{(2)}_iでラベル付けるか好きな方を選択出来るが、 [ A_1, A_2 ] \neq 0の前提条件により a^{(1)}_i a^{(2)}_iを一つの状態に同時に指定することは出来ない。しかし、今の仮定では縮退が無いため、

 
  |a^{(1)}_i, E_i > = |a^{(2)}_i, E_i >

である。これは次の式で見るように、 [ A_1, A_2 ] \neq 0に抵触している。

 
  ( AB - BA ) |a^{(1)}_i, E_i > = (AB-Ba^{(1)}_i) |a^{(1)}_i, E_i > \\
  = (AB-Ba^{(1)}_i)|a^{(2)}_i, E_i > = (A a^{(2)}_i - a^{(2)}_i a^{(1)}_i) |a^{(2)}_i, E_i > \\
  = (A a^{(2)}_i - a^{(2)}_i a^{(1)}_i) |a^{(1)}_i, E_i > = (a^{(1)}_i a^{(2)}_i - a^{(2)}_i a^{(1)}_i) |a^{(1)}_i, E_i > \\
  = 0

よって、縮退が無いという仮定が誤りであり、実際には縮退していることが言える。

これの具体例で良さそうだなぁと思ったのが点群で、例えば C_{3v}を考えて、 A_1 = C_3 A_2 = \sigma_vと対応付けられて、図を描くとわかるが、 C_3 \sigma_v = \sigma''_v \sigma_v C_3 = \sigma'_v(鏡映面の異なる鏡映操作)となり、交換しない。加えて、系が C_{3v}に属していればハミルトニアン C_{3v}の対称操作に対して変わらない。よって、エネルギー固有状態は縮退している。
実際、 C_{3v}は二次元の既約表現 Eを持ち、二重に縮退する。もちろん、一次元の全対称既約表現 A_1(どの対称操作に対しても不変)しかないような部分空間を用意するならば、話は別で縮退は無い(この部分空間においては [ C_3, \sigma_v ] = 0 が成立)。
でもやっぱ点群とかは図が無いと説明が絶望的に伝わらんなぁ。。。でもサクライだと角運動量 L_z L_xで説明してて、交換しないのがただ数式的な感じがして個人的には縮退のイメージがピンとこなかったんだよなぁ。。。悩ましい。。。